創業当初、送り出した「濃厚スープ」は受け入れられず、工夫を重ねて誕生したのがマイルドなスープ「九州じゃんがら」です。さらにそこから、4年の歳月をかけ、「濃厚スープ」を進化させた「ぼんしゃん」を表舞台に立たせることに成功しました。

しかし、下川の中には燻っている思いがありました。 「ラーメン店をやると決めた時、最初に思い描いたものは、まだ作っていない」
下川の心の真ん中にあったのは、自身が育った熊本・玉名のラーメンでした。しかし、当時の玉名のラーメンは野性味のある匂いも特徴だったのです。
考えあぐねた結果、玉名から少し南、熊本市内のラーメンから着想を得ます。

「九州じゃんがら 赤坂店」の出店準備が進む中、真新しい厨房で、2名の有志が試作に取り掛かりました。
ひとりは、大きな寸胴を前に、ステンレス製のパイプで「煮えたぎる豚骨のスープとガラ」を混ぜ合わせます。もうひとりは、「にんにく」をごま油で揚げます。
集中を切らさないため、他のスタッフをシャットアウトした状態で、何日にも渡ってトライ&エラーは続きました。

どれほどの日数が経ったでしょうか、遂にスープが完成しました。「じゃんがら」と「ぼんしゃん」の中間ぐらいの濃度、やや茶色がかった色みのスープです。
この新しいスープには「ぼんしゃん」の仕込みが大きなヒントになりました。「ぼんしゃん」の工程から途中枝分かれする形で「熊本風の豚骨スープ」が完成したのです。
ほどなくして、香ばしいにおいが食欲をそそる「マー油(揚げにんにく油)」もできあがりました。

1994年「ぼんしゃん」の子供、『こぼんしゃん』は、『九州じゃんがら』赤坂店とともに産声を上げました。