下川は大学を卒業して、乳酸菌飲料メーカーに入社しました。
最初に配属されたのが、ある地域の配達センターでした。
配達センターは、商品の配達を担う契約社員と共に汗を流す現場の最前線です。
希望した部署ではありませんでしたが、ここで非常に人間臭い付き合いを経験します。
充実した日々を過ごす中、突然、希望していた本社海外部へ異動の辞令が下川におります。
海外部とはその名の通り、海外展開を担う部署です。
配属されると仕事のスタイルは一変、電話やファックスでの交渉ごとや、やり取りが中心です。
語学や貿易実務などの勉強にも追われました。

そんなある日、大学時代にアルバイトでやっていた家庭教師や塾講師の体験をふと思い出しました。
「自分の情熱は、子どもたちと直に触れ合い、勉強や生き方を教えることでこそ発揮できるのではないだろうか」
海外部で忙しい毎日を過ごす下川に、一度芽生えた思いは次第に大きく育ち、やがて決意にかわります。
ついに下川は会社に退職願を提出します。
1979年、下川が 25歳で始めたのが進学補習教室『ブルカン塾』です。
塾の名称は、学生時代に下川が作ったサークル名「ブルドッグ・カンパニー」の略です。
ブルドッグのように「カッコは悪いが、愛嬌があり、頑張る心は負けないぞ」という思いを込めた名前でした。